どうという事もない日々の記録

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「苦役列車」西村賢太:著

平成22年度下半期の芥川賞に「苦役列車西村賢太著と「きことわ」朝吹真理子著の二作品が同時受賞という発表がされたのは先月17日。
このニ作品とも定期購読している「新潮」に掲載されていた作品。実は両方共手元にあるのに読んでいなかった。
早速掲載月号を引っ張り出して読む。
「新潮12月号」掲載の西村賢太氏の「苦役列車」の方が印象に残った。

読後に感じたのは以前に新聞に連載されていた(2005年11月〜2006年12月)
桐野夏生著の「メタボラ」を思い出した。
現在の若者が置かれている環境の中での生き方が描かれている。
戦前生まれの人間が通ってきた道とはまた異なる世界ではある。
当時。秋葉原事件の犯人が自動会社の期間工であったことがこの作品と結び付けられたこともあった。

苦役列車」の主人公もまた破滅的な生活をしている。
そこから抜け出せない情けない自分と、どうにもならない生い立ちに苛立ちながら日々を過ごす。
不満をどこにもぶつけても結局は自分に跳ね返ってくる。
そんな若者の生活や、その日払いの労役の働き場所で知り得た久し振りの友人との交流と破綻。
明るい展望は何も無い。
この若者「貫太」妙に頭の中に残る。


新潮 2010年 12月号 [雑誌]

新潮 2010年 12月号 [雑誌]

*1296577388*2011年02月01日のツイート