どうという事もない日々の記録

[ はてなブログ版] 出かけた時の記録や備忘録的なメモなど。

看 守 眼

R県警の機関誌の編集に携わる事になった山名悦子が、今年定年退職する警察官から集めた現行の中に、一部が見当たらない。38年警察に勤務した内の29年間留置場の看取だった近藤宮雄の原稿が無い。この原稿がまだ出されていないことが分かり家まで取りに行くが、本にと中々会えない。
近藤は刑事になりたいがために、どの署に異動しても必ず留置場の看取を希望した。
刑事の養成の段階の中で1〜2年看取を勤め、留置場の中の被疑者の様子を観察して刑事眼を養うそうだ。
警察学校の成績が悪かった近藤はこれで刑事になることをかけていたのである。
一年前の主婦失踪事件は未解決で終わっている。別件で捉えた不倫相手がその犯人と見ていたのだ、が結局は自白があられなかった。
この男の留置場での様子を観察していたのが近藤である。この男は結局釈放されたのだが、近藤は看守眼でこの男を犯人と睨んでいる。
退職前の自由時間に一人、この男の行動を追っている。
原稿が見当たらなかった事から、機関誌の編集者の悦子は刑事になれなかった警官の執念のような行動を目にする事になった。